第10回フレンドシップサロン

「大阪ベイエリアの事前復興と未来づくり」
〜産業と文化の回廊形成に向けたまちづくりを構想する〜


※本セミナーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からWeb形式での開催となりました。
また、予定しておりました交流会は中止とさせていただきますので、予めご了承ください。

■開催趣旨

 生産技術振興協会は大阪商工会議所と共催で、中堅・中小企業と教授の先生方とが、地域社会に対する抱負を語り合うことでフレンドシップを深め、大阪の発展を語り合い親交を深める事を目標に、毎年フレンドシップサロンを開催しています。

 事前復興とは、大災害への事前の対策を契機として未来社会を構想し、今すぐそれに向けた一歩を踏み出し、歩み続けることです。人口減少や近代の過度な開発による気候変動などの課題に立ち向かい、飛躍する科学技術の効用を見定め活用し、未来社会に相応しい都市・地域構造へと再編するチャンスであり、それはたとえ大災害がおとずれなくとも、理想の未来に向けて必要な 都市や地域をつくり続けることです。

 今回は、大阪ベイエリアに人々が持続的に形成してきた社会・空間と、そこに継承されてきた大切な理念を考察し、未来に向けてベイエリアに再編集するべき産業と文化の回廊を構想します。 話題提供では、「弱い人」を中心に置いた未来社会のビジョンを共有し、命を吹き込むまちづくりの事例として、港区・大正区がものづくりを通して取り組んできた医療現場における社会課題解決やコミュニティ再生の事例を取り上げ、近代大阪の理念の継承や現代都市計画の展開に よる具現化の方策を探ります。

 さらにパネルディスカッションでは、大阪大学の理念でもある命をまもり、はぐくみ、つなぐための産業の展開を議論するとともに、大阪・関西万博が時代の転換期に担うべき責任と役割を提示することを目的とします。

 ◆ポスター

■開催概要

日時 : 2020年10月23日(金)15:00〜17:40
場所 : オンライン(YouTube Live)
主催 : 大阪商工会議所、一般社団法人生産技術振興協会
共催 : 大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)
参加費: 無料
◆お申込み、プログラムの詳細は【こちら】をご覧ください


■プログラム

司会:吉村保範(大阪商工会議所 産業部 産業・技術振興課長)

15:00〜15:05 ご挨拶 大阪商工会議所 議員/(一社)生産技術振興協会 理事 生駒京子

15:05〜15:15 事前研究会のレビューと問題提起
       木多道宏(大阪大学大学院工学研究科 教授/魅力ある街づくり分科会座長)

【講演1】15:15〜15:45 「『弱い人を』を囲む社会を目指して−SSI理念と取り組み」
       堂目卓生氏 (大阪大学 SSI長/大阪大学大学院経済学研究科教授)

【講演2】15:45〜16:15 「ものづくりから社会課題を解く」
       木幡 巌氏 (ガレージ大正・代表/株式会社木幡計器製作所 代表取締役)

  (16:15〜16:30 休憩)

【講演3】16:30〜17:00 「近代の大大阪から未来に受け継ぐこと−映画『大大阪観光』に大阪再生のインスピレーションを探る」
       橋爪節也氏 (大阪大学総合学術博物館 教授/大阪大学大学院文学研究科(兼任) )

【講演4】17:00〜17:30 「都心の都市再生と臨海部をつなぐ都市・大阪の再編集」
       嘉名光市氏 (大阪市立大学大学院工学研究科 教授)

【総括】17:30〜17:40 「大阪ベイエリアにおける産業と文化の地域コンテクスト(地域文脈)」
       木多道宏 (前掲)



■講演概要
●「『弱い人を』を囲む社会を目指して−SSI理念と取り組み」 堂目卓生氏
 「共生]を考えるにあたって、経済学をはじめとする社会科学は、財やサービス生産に貢献する強い人」 が貢献しない「弱い人」を助ける、という思考法をとってきた。ししながら、「強い人」が弱い人を囲み、 彼ら彼女らと向き合い、自分の中にある「恐れ」や弱さ」を認め,乗り越えていくことによって、本当の 共生社会、本当の安心安全社会に至ることができる。2年前、大阪大学はこのような観点に立って, シンクタンク「社会ソリユーシヨンイニシアテイブ(SSDJを立ちあげた。本講演で、・SSIの理念と取組を 招介しつつ、事前復興を中心概念としたまちづくりを構想するにあたって基礎に置かれるべき人間観 について論じる。
●「ものづくりから社会課題を解く」 木幡 巌氏
 大正区は年々人口減少と高齢化が進み、かつて・東洋のマンチェスター・と言れた日本の近代産業化 の黎明期には、その中心の地であったという誇り-も昨今は失われかけている。そうしたなか2013年から、 「ものづくりの町」としての誇りを取り戻そうとスタートした「大正ものづくり事業Jを2015年からは実行委員長 として牽引し、自社も創業時より111年間圧力計を作り続ける事業から、医療機器やIoT分野のベンチャー 的事業革新にも挑戦してきた。現在は自社工場内にGarage Taisho (ガレージ大正)を設立し、地域での 医工連携プロジェクトを発足するなどの経験から、民間企業として、地域の中小企業が中心となり 、官民連携で地域の課題解決につながる地域産業復興を目指す取り組みについてお話しをする。
●「近代の大大阪から未来に受け継ぐこと−映画『大大阪観光』に大阪再生のインスピレーションを探る」 橋爪節也氏
 澪つくしを市章とする大阪市は、市中に張り巡らされた運河と海港により発展し、大正14年、第2次市域拡張で東京市を 抜いて日本最大、世界第6位のマンモス都市「大大阪」となる。「大大阪」時代のベイエリアのイメージがどのようであつたか を,幕末の『浪花百景』や近代絵画に描かれた都市景観にも触れながら、観光艇「水都』が登場する大阪市電気局-産業部 制作の映画[大大阪観光』(大阪市指定文化財)を題材に考察する。この映画は、海外からの観光客誘致と産業振興を目的 に制作され、現代に通じる問題を孕んでいる。登場する水辺は物流の場だけではなく、都市美を象徴する空間であり、 市民が生活する日常的な場そのものでもあった。
●「都心の都市再生と臨海部をつなぐ都市・大阪の再編集」 嘉名光市氏
 バブル崩壊以降の長期低迷を経て、大阪は今ようやく再生軌道を描こうとしてるように見える。大阪の都心部と大阪の 産業を支える港湾の位匿する臨海部をどのように?ぐかは、つねに大阪の都市構造上の重要課題であった。しかし, 港湾の沖出しなど都心と港湾の位匿関係の変化によって、その空間的な関係は再構築が必要になる。また、都心に おける都市機能の更新や都市空間の再編といった都市再生の取り組みも進んでおり、都心と臨海部の機能的な関係性 にも変化が生まれている。大阪市区改正設計から100年を経た今、そして2025年の大阪・関西万博を前に、大阪の都市 づくりが目指すべき方向について考えてみたい。

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