第一部:震災特集 | |
大久保昌一・大阪大学名誉教授に訊く「日本の都市計画の現状と今後の在り方」 | |
原子力発電所の地震時の安全確保について | 中村隆夫 |
福島原発事故にともなう放射能汚染 | 飯田敏行 |
津波に対する対策と課題 | 出ロ一郎 |
建築の耐震技術と地震被害 | 宮本裕司 |
被災者の命をまもる−災害に関するがん患者の看護研究に携わった経験から− | 荒尾晴惠 |
子どもにおける大震災の後遺症を減らす為の対応 | 杉山登志郎 |
※発刊趣旨今回の大震災は地震・津波の被害とともに福島原発の壊滅的な事故を伴った。 これらの災害は科学者に大きな衝撃を与えたばかりか、燃料資源の乏しい我が国のエネルギー 問題を課題として残していった。これらの国民的関心事や課題に応えるために、通常年4回 出版している季刊誌「生産と技術」に加え、別冊<震災特集>を緊急出版する事にした。 本書は2部構成となっている。1部<震災特集>は、主に東日本大震災に関する事象について各分野工学部・理学部・医学部の 専門家がそれぞれの立場で問題点を執筆している。執筆者は主に大阪大学の教授陣が、災害に 強い都市計画のあり方、原子力発電の安全性、天災としての地震や津波、そして被災者のこれ からの心のケアの在り方について述べる。2部<新エネルギー戦略 バイオマス>は、福島原発の壊滅的な事故に関連し、これからの日本の エネルギーについてその将来像を語り合った講演会の抄録である。原発に代わる持続可能な自然エネルギーについてそれぞれはいまだ本格的な普及に向けては なお発展途上であり、火力や原子力など既に成熟した電源と比較すると、いまだ効率面で 非効率な面がある。しかし、効率だけで判断するのではなく、安全性と地球湯環境保護を 備えた自然エネルギーに関して、その可能性を見極め、未来に向けて育てていく発想が重要 と考える。これらはいずれも「地産地消費型小型発電」という新たな選択肢である。日本では 生ゴミや木質ゴミが無尽蔵に廃棄され、都会では多くの食物残渣や下水道処理から発生する産業 廃棄物の活性汚泥等が発生する。そう言った意味で日本では、バイオマスは資源が豊富と言う 意味で、大いに期待できることに加え、太陽光と風力に比べ、はるかに安定的に発電することが可能だ。これらの少数派の電源は様々な自然エネルギーと既存電力が互いに補完し合うベストミックスを 構築することが重要だ。特に太陽光や風力は発電の安定性に欠けるため、バイオマスエネルギー で機動的にサポートする仕組みが必要とされる。2部<新エネルギー戦略 バイオマス>では日本 のエネルギー将来像を考えるときの参考にして頂きたいと考えている。