毎年開催されるこのハイテク推進セミナーでは、科学技術は社会をどう変えてゆくか
という視点を通して、現代の社会における問題や現象をひも解いてきました。今回の
テーマは「災害に強い街づくり」です。
地球温暖化に伴う異常気象により、地域での豪雨が頻発し、海水面温度の上昇に
よる台風の大型化や高潮は、現代社会に大きな影響を及ぼしつつあります。また、
日本周辺の地殻へのエネルギーの蓄積は、南海トラフを中心とする地震のリスクを
高めており、地震時の建物や都市基盤の崩壊や津波による人的・物的被害に対する
影響は計り知れないものがあります。日本全国のなかでも、高密度化した関西の都
市圏では、水害や台風、地震による大規模被害の危険性が高く、街の構成要素であ
る地盤・住宅・ビルの耐震対策をはじめとする様々な災害対策が不可欠と言えます。
また、人命、社会資産の保護ともに、企業の事業継続計画(BCP)のためにも、災害
に対して強い街づくりが、今強く求められています。企業活動の観点からは、防災・
減災対策を行った企業ほど、短期間で売上を回復できるともいわれ、被災前における
自然災害への備えが重要と言えます。企業の防災・減災対策は、BCPと関連づけられ
ますが、BCPの策定率は全体の2割以下にとどまり、なお一層の取組みが必要と言え
ます。以上の様な社会的背景から、街を災害から守るためにいま我々は何をなすべき
かを考え、企業、学術、行政など様々な視点から討論を行うことを目的として、
「災害に強い街づくり 〜関西圏の都市・建築・企業を災害から守る方策〜」
と題するハイテク推進セミナーを開催いたします。
◆ポスター(1298KB) ◆講師紹介(5000KB) ◆レジメ(1932KB)
- 日 時:2019年10月31日(金)10:00〜17:20
- 会 場:島津マルチホール(阪急ターミナルビル14階)
- (〒530-0012 大阪市北区芝田1丁目1−4 電話:06-6372-5200)
【地図はこちら】
- 参加費:一般、会員 6,000円、教員、名誉教授 3,000円
学生 1,000円(いずれも税込)- 定 員:60名(定員に達した時点で受付を締切)
- 懇親会:阪急うめだ本店13階「グランドカフェ・レストラン シャンデリアテーブル」
- 時 間:17:20〜19:00
- 会 費:3,000円(当日受付にてお支払いください)
- ※キャンセルの際は必ず事務局までご連絡ください。
- ※懇親会の当日キャンセルは、全額キャンセル料がかかります。
- 申込先:(一社)生産技術振興協会 事務局
【参加申込みフォームよりお申し込みください】
10:10〜11:10 1.津波・高潮・暴風に対する関西都市の備え | ||||
大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 教授 青木伸一 氏 | ||||
昨年の台風21号では、大阪湾に既往最大規模の高潮が発生し、関西空港など各地で浸水被害が発生した。また、市街地では暴風による建物被害も大きかった。将来的には、台風の強大化により災害リスクが増大することが予想されている。また、南海トラフ地震の最悪シナリオでは、これまでに経験のない大規模な津波の発生が予想されており、臨海部に位置する大規模工業地帯から危険物質が流出し、大規模な災害を引き起こすことも危惧される。今後の都市の防災・減災は、過去のハザードレベルを超える自然外力に対して、高度に利用されている都市域をいかに守るか、という問題に集約できる。講演では、津波・台風災害を題材として、大阪湾沿岸の都市において巨大沿岸災害にいかに備えるべきかについて、様々な視点から考える。 |
11:10〜12:10 2.関西圏の水防災対策 〜大阪都市圏を中心に〜 | ||||
国土交通省近畿地方整備局企画部長 橋本雅道 氏 | ||||
昨年は、6月の大阪北部地震、7月の豪雨、9月の台風21号など、関西がさまざまな自然の脅威に晒された年でした。近年、年間降雨量は減っているものの豪雨の発生件数が以前に比べて増加するなど、雨の降り方が変化しており、適切な対応が必要と考えています。2025年の大阪・関西万博をはじめ、関西を元気にする動きが活発化する中、関西を守るためにこれまでに進められてきたインフラ整備などについて、大阪都市圏を中心に取り組みや効果について紹介する。 |
13:30〜14:30 3.大地震での揺れと建物の耐震対策 | ||||
大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 教授 宮本裕司 氏 | ||||
現在、関西圏において南海トラフ巨大地震や都市直下の活断層地震の発生が懸念されています。これらの地震による人的、物的、経済的な被害は、関西圏に計り知れない大きな撃を与えることは確かです。特に大阪地域は地盤構造が複雑で、地震の揺れも複雑となります。そのため、地震対策を行う上で建設地点の地盤の揺れを理解し、最適な耐震対策を行い地震に強い建物や街や都市をつくることが重要です。過去に発生した大地震での建物被害も顧みて、地震時の大阪地盤と建物の揺れがどのような要因で生じるのか、大阪地域に建つ建物の基礎を含めた耐震を高度化するために何が必要かについて考えます。 |
14:30〜15:30 4.住宅の地震被害と対策 | ||||
京都大学生存圏研究所 教授 五十田 博 氏 | ||||
大きな地震が起こると住宅、特に木造住宅の被害が発生する。被害発生には2つの原因があり、ひとつは、住宅はいたるところにあり、揺れの大きい地域にも住宅が建設されていることが多いこと。そして、もうひとつの原因は耐震性の低いものがいまだ数多く存在することである。一方で、激震地であっても被害が少なく、地震後もほとんど修復も必要とせず継続使用できているものもある。一見、その建物に特殊性はみられないが、その違いは何なのか?を本講演では概説する。また、最近、資源循環材料である木材を有効利用することを目的に、木材を用いた高層建築が世界的に注目されている。わが国でも国をあげて木材利用に取り組んでいる。その話題についても多少ふれることとしたい。 |
15:50〜16:10 5.【話題提供】企業におけるBCP対策 | ||||
ファシリティリスクコンサルティング株式会社 代表取締役社長 笠原英樹 氏 | ||||
事業活動の被害を限りなく小さくし「生産を止めない」ために 1.サプライチェーン拠点戦略の優先順位を設定 2.建物の耐震対策を静的解析ではなく動的解析で解決 3.非構造・設備耐震の潜在リスクの見える化と対策実施 4.新技術の採用で"居ながら工事"により生産を継続 年間生産計画の実行が最優先条件となり、既存ファシリティーの抱えるBCP対策を諦めて先送りしていませんか。生産を止めずに実現する4つのソリューリョンを紹介します。 |
16:10〜17:10 6.地震・火災に対する地域の避難・復興計画 | ||||
大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 教授 横田隆司 氏 | ||||
昨年の大阪北部地震など近畿圏においても災害の多発が懸念されるようになってきています。また、阪神淡路大震災以降には近畿圏では大火は起こっていませんが、2016年の糸魚川大火に見られるように大火も侮れません。こうした大災害発生時における避難やその後の復興については、さまざまな観点から研究を踏まえた対策がなされています。本セミナーでは、災害の多様性に鑑みて、我々の短いスパンの経験値だけでは今後の大災害を乗り越えることはできないだろうという立場で、それらの大災害への対策の現状と課題について人間工学の観点から紹介したいと思います。とくに個々の建築物ではなく、地域全体の問題として取り組む必要性にも言及します。 |