毎年開催されるこのハイテク推進セミナーでは、科学技術は社会をどう変えてゆくかという
視点を通して、現代の社会における問題や現象をひも解いてきました。
今回のテーマは都市系バイオマスのエネルギー利用です。
近年、静脈産業を基盤とした近未来のエネルギーシステムに新しい動きがあります。それは、
下水汚泥、生ごみなどの、いわゆる"都市系バイオマス"を電気や熱等のエネルギーに転換し
利用することで、都市域のエネルギー循環を図り太陽光等との併用により、都市自体がエネ
ルギーの自立を目指そうと言う動きです。
ここでは最先端で行われている都市系バイオマスのエネルギー利用に関する技術・システム
の知見・事例を紹介し、都市のエネルギー・インフラ再構築の要諦を考えます。
- 日時 :平成27年10月6日(火)10:00〜17:00
- 会場 :島津マルチホール(阪急ターミナルビル14階)
- 懇親会:キッチン&バー 「シィーファー」(阪急ターミナルビル17階)
- (〒530-0012 大阪市北区芝田1丁目1−4) 【地図はこちら】
- 参加費:¥5,000円(消費税を含む) ※名誉教授ご招待
- 定 員:70名(先着順)
- 申込先: (一社)生産技術振興協会 事務局
- ※定員に達しましたので、申し込みを締め切りました。
10:10〜11:00 1.「都市エネルギーシステムにおける都市系バイオマスのポテンシャル」 | ||||
大阪大学 教授 下田吉之 氏 | ||||
都市系バイオマスは活発な人間活動に付随して必然的に都市内で発生する再生可能エネルギー資源であり、今後の活用が期待される。都市系バイオマスの再生可能エネルギー資源としての特質と位置づけ、大阪を対象とした都市のマテリアルフローおよびエネルギーフローの推計結果から見たエネルギー削減ポテンシャルの大きさ、熱供給、発電などの利用システムの現状と将来展望、中長期的に見た都市代謝系と都市エネルギーインフラストラクチャーの統合の必要性について解説する。 |
11:00〜11:50 2.「下水処理施設と都市ごみ焼却施設の連携に関する環境性・経済性評価 〜都市型バイオマスエネルギー変換施設としての再定義〜」 | ||||
大阪大学 助教 中塚記章 氏 | ||||
従来は"処理"の対象であった下水汚泥と都市ごみを都市型バイオマス資源とみなして、その処理施設である下水処理施設と都市ごみ焼却施設を、下水汚泥と都市ごみのエネルギー変換施設であると再定義します。このことによって、施設間の排熱と物質の融通に代表されるエネルギー変換プロセスの効率化を行うことによって生み出される環境性・経済性メリットを、人口減少や下水網の流域拡大という将来想定されるシナリオを考慮したシナリオ分析によって定量化します。 |
13:10〜14:00 3.「固体連続並行複発酵による都市型バイオマスからのエタノール生産」 | ||||
関西大学 教授 片倉啓雄 氏 | ||||
古紙、廃綿繊維、食品廃棄物などの都市型バイオマスを、ドラム型の反応槽を用いて水分50〜70%の低水分で並行複発酵を行い、ヘッドスペースのガスを凝縮塔に循環させ、 エタノールを連続的に回収するシステムを紹介する。従来の液体発酵では大量に発生する廃水の処理が不要で、残渣も低水分で処理が容易である。 糖化・発酵・回収を一つのシステムに集約しているためプラントは小型化でき、酵素・酵母も実質的に再利用できることが特徴である。 |
14:00〜14:50 4.「都市系バイオマスからのバイオガス化普及に向けた課題と対応策」 | ||||
株式会社リナジェン 代表取締役 三嶋大介 氏 | ||||
固定価格買取制度の開始、さらには食品リサイクル法の改正をうけて、下水汚泥や食品廃棄物といった都市系バイオマスからのバイオガス化が改めて注目を集めています。一方で、バイオガス化への取り組みそのものは新しいものではなく、これまで数多くのプロジェクトが試みられたものの、成功とされるプロジェクトは必ずしも多くない状況です。本講演では、国内外のバイオガス化事業の事例紹介を通して、バイオガス化事業の本格的な普及に向けた課題とその対応策についてご提案致します。 |
15:10〜16:00 5.「大阪市における下水道エネルギー・資源の利用の取り組みと経済的効果について」 | ||||
大阪市建設局 課長代理 安井幹人 氏 | ||||
大阪市の下水道事業は、市民270万人からの下水/排水を、能力日量約280万m3の終末処理場で受け入れる 大規模事業でありながら、発生汚泥はバイオマス資源として100%消化処理/ガス化が達成されている。これらを電力や熱エネルギーに変換し有効 利用することで、経営面での大きな効果をもたらす。さらにガス化の後、残された消化汚泥も固形燃料化や溶融スラグ化による全量有効利用する ことにより、埋立処分量をゼロとする先駆的な取り組みを進めており、ここに至る経過と技術的な評価と、これからの展望について報告する。 |
16:00〜16:50 6.「都市建物内メタン発酵による生ごみと厨房排水からエネルギー回収 〜あべのハルカスを事例として」 | ||||
株式会社竹中工務店 環境エンジニアリング本部 主任 加藤利崇 氏 | ||||
飲食や食料品の物販テナントの入居する大規模な商業ビルでは多量の生ごみが発生している。これまで生ごみのメタン発酵は大規模でなければ経済性が悪くビル内に設置されることはなかった。一方、厨房排水を処理する厨房除害設備からは処理汚泥が発生し頻繁にバキューム車等にて搬出し外部で処理する必要がある。本講演では、生ごみのメタン発酵によるエネルギー回収装置で厨房排水処理汚泥も同時に処理することで小規模ながら経済的に処理可能なシステムについて説明する。事例として、日本で初めてビルの地下に導入されたあべのハルカスのメタン発酵設備の運転実績について説明する。 |