毎年開催されるこのハイテク推進セミナーでは、科学技術は社会をどう変えてゆくかという
視点を通して、現代の社会における問題や現象をひも解いてきました。今回 のテーマは
テラヘルツ波技術の産業利用です。
近年、テラヘルツ波技術は、情報通信、災害対策やセキュリティ保全のための安全・安心応用、
医薬品分析、非破壊検査・工業応用、環境計測、更には考古学的発見、ビックバンから惑星の
誕生の謎の探求まで幅広い分野で、新産業基盤を生み出す新たな技術として注目を浴びて
います。本ハイテク推進セミナーでは、テラヘルツ波技術が生み出す新産業について概説し、
関連技術分野の最新動向と今後の展望を、それぞれの専門家に解説して頂く予定です。
- 日時 :平成28年11月9日(水)10:00〜17:00 (懇親会:17:30〜19:00)
- 会場 :島津マルチホール(阪急ターミナルビル14階)
- 懇親会:キッチン&バー 「シィーファー」(阪急ターミナルビル17階)
- (〒530-0012 大阪市北区芝田1丁目1−4 電話:06-6372-5200) 【地図はこちら】
- 参加費:5,000円(消費税込)、教員・学生・名誉教授 1,000円(消費税込)
- 定 員:60名(先着順)
- 申込先: (一社)生産技術振興協会 事務局
- ※定員に達しましたので、申し込みを締め切りました。
10:10〜11:00 1.「テラヘルツ波で見つける薬物 〜高出力高感度分光イメージングの最前線〜」 | ||||
名古屋大学 教授 川瀬晃道 氏 | ||||
テラヘルツイメージングによる非破壊診断技術によって、近い将来、郵便や衣服に 隠された覚醒剤・爆発物の検査、薬局での処方箋ミスのチェック、プラスチック製品 の内部欠陥診断、などへの応用が期待されています。近年我々が開発に成功した テラヘルツ波パラメトリック発生器では、レーザー光の波長変換技術により、既存の 大型自由電子レーザーなどに較べてはるかに高出力かつ小型簡便で、さらに超高 感度検出システム、テラヘルツ波増幅器なども実現。現在、それら新技術を応用し たテラヘルツ分光・イメージング技術の研究開発と、産業分野への展開を加速中です。 |
11:00〜11:50 2.「テラヘルツ波で見る古墳壁画」 | ||||
奈良文化財研究所 保存修復科学研究室長 高妻洋成 氏 | ||||
古代史ブームの火付け役となった極彩色の飛鳥美人の絵で知られる高松塚古墳壁 画、天文図、四神そして十二支の壁画で知られるキトラ古墳壁画。この二つの古墳 壁画は漆喰の上に描かれています。石材の上に塗られた厚さ数ミリの漆喰層の状 態は、従来のX線ラジオグラフィ、赤外線リフレクトグラフィなどの方法では可視化 することができませんでした。テラヘルツ波イメージング技術はこの漆喰層の状態を 可視化することのできる唯一の方法です。文化財の保存修復の世界でテラヘルツ 波イメージング技術が応用されている事例について古墳壁画を中心にご紹介します。 |
13:10〜14:00 3.「テラヘルツ波で探る暗黒の宇宙 〜私たちのルーツをたどる天文学〜」 | ||||
自然科学研究機構国立天文台 チリ観測所 平松正顕 氏 | ||||
電波と赤外線の中間領域にあるテラヘルツ波を用いた天文学は、可視光では見る ことのできない宇宙を探る重要な手段です。特に、最高で950GHzまでの周波数の 電磁波を観測することが可能なアルマ望遠鏡の完成によって、天文学の様相は一 変しつつあります。既存の望遠鏡に比べて圧倒的に高感度・高解像度を達成できる アルマ望遠鏡の観測から、星や惑星、銀河の誕生の謎に迫る成果が続々と出てき ています。本講演ではテラヘルツ波から電波を観測する天文学の特徴と現状、そし てアルマ望遠鏡が描き出す宇宙の姿を紹介します。 |
14:00〜14:50 4.「煙の向こうをテラヘルツで見る? −災害現場応用に向けて−」 | ||||
フロンティア創造総合研究室 研究マネージャー 関根徳彦 氏 | ||||
火災現場など高温の粉塵や煙が充満する災害現場では、二次災害を防ぐためにも 事前に現場の状況を把握することは非常に重要です。この際、テラヘルツ(THz)帯 と呼ばれる周波数帯を用いてその画像を取得できると、可視光領域や中赤外光領 域には無い特徴を生かした様々な情報を得ることが可能になります。そこで本講演 では、THz帯の電波を用いた2次元イメージングを実現するための取り組みを紹介 します。例として、模擬火災中でのTHzイメージングと、またセキュリティ応用向けの 例として隠匿物のイメージングについて紹介します。 |
15:10〜16:00 5.「テラヘルツ顕微鏡で見る省エネルギー材料・デバイス 〜持続可能社会の実現に貢献する先端計測技術〜」 | ||||
大阪大学 レーザーエネルギー学研究センター 准教授 川山巌 氏 | ||||
レーザーテラヘルツ放射顕微鏡は、試料に超短パルスレーザーを照射・スキャンし、 放射されるテラヘルツ波を計測することにより、試料表面や内部の電流、電界および 分極のダイナミクスを可視化可能な手法です。この手法を用い、我々は太陽電池やワ イドギャップ半導体などにおいて、従来手法では困難であった欠陥・損傷や性能劣化 などを検出可能であることを明らかにしました。省エネルギー社会に不可欠なこのよう な材料やデバイスの性能向上にむけて、先端計測の立場からどのような貢献が可能 であるか議論し、その装置化や産業応用について展望を述べます。 |
16:00〜16:50 6.「テラヘルツ市場の開拓 〜理化学機器から産業装置への展開〜」 | ||||
株式会社アドバンテスト テラヘルツシステム事業部 技術開発SE課 マネージャー 加藤英志 氏 | ||||
株式会社アドバンテストは、光と電波の特徴を併せ持つテラヘルツ電磁波を用いた 計測を新規事業として取り組んでいます。我々が基礎研究を開始してから10年余 を経て、多くのテラヘルツ分光製品を世に出して参りましたが、テラヘルツ産業自体 はまだ成長期への入り口にあります。なお一層応用市場を広げるため、研究用機器 開発で得た計測技術を基に、魅力的な産業応用装置を提案して市場を創っていき ます。本講演では、これら我々のテラヘルツ新市場への取り組みを紹介します。 |